代表挨拶(Chairman)

鈴木寛

 OECD日本イノベーション教育ネットワークには、前史があります。 2011年3月の東日本大震災で未曾有の困難に直面した際、すみやかに復興をしていかなくてはならないことは明らかでした。しかし、それに加えて被災にあわれた方の想いに応えていくためには、まず東北地域の子どもたち各々に素晴らしい人生を送っていただき、その子どもたちがいづれ地域を支えていくということが最も重要であると考え、創造的復興教育というプロジェクトをスタートしました。
 その中の一つがOECD東北スクールでありました。OECD東北スクールは、グリアOECD事務総長をはじめとした暖かいご支援の下で、大成功を修めました。被災地から84名の高校生が3年かけて準備し、8月にパリで東北が復興した姿を世界中に紹介するイベントを行い、世界各国から15万人の方が来場されました。
 そのOECD東北スクールの成功をうけて、同時並行で準備していた、ふたば未来学園が2015年の4月に開校されたのです。 この流れを加速させ、深め、広げていくというのが、OECD日本イノベーション教育ネットワーク設立の趣旨であります。

 

 現在、OECDにおいては、Education2030という、2030年の教育を構想するプロジェクトが始まっています。日本もOECDの加盟国各国とともに、試行錯誤しながら共に2030年の教育のビジョンと方法とネットワークを創り上げていきたいと考えています。本ネットワークは、OECDと日本の現場や研究者のリエゾンになっていくことも目指しているのです。
 OECDで中心になされている議論は、21世紀に必要とされるコンピテンシー(力)をいかに構想するかということです。今、その中で最も重要な概念は「協働的な問題解決能力」だと言われています。スキル(単なる技能)のみではなくてキャラクター(人格)もが、21世紀の教育では大切にされなければならないと言われているのです。また、「グローバルコンピテンス」という、国内だけではなく地球規模での課題解決ができる人間を育成するとこも大切であるとの議論が進んでいます。
 そのようなコンピテンシーを育むために、最も注目を浴びている教育手法が、 「主体的に深く学ぶ:アクティブ・ラーニング」、「プロジェクト学習:多様な他者と協働しながら現実課題の解決をはかる」の2点であり、OECD東北スクールは、まさにこの2点の教育手法の効果として現れたものでありました。 OECD日本イノベーション教育ネットワークは、OECDのEducation2030というプロジェクトと協働しながら、日本国内では東京大学が立ち上がりのサポートを行い、東北スクールでリーダーを務められた福島大学の三浦先生、研究者を取りまとめていただく東京大学の秋田先生、白水先生を始めとした方々のお力をお借りして、2030年の教育を考えるネットワーク(輪)を広げていきたいと考えています。
 学術研究を大切にしていくことはもちろんですが、それだけに終わってはいけないと考えています。先端的な実践を現場の皆様と直結して行い、日本の各学校、OECDの皆様、専門家と実践家が一緒に2030年の教育とは何なのか?ということを深く考え実践し創り上げていくことこそが、OECD日本イノベーション教育ネットワークに課せられた使命なのであります。

 2030年に向けての新しい教育の人類史をつくっていきたいと思います。皆様、どうかご支援、ご協力のほどをよろしくお願い致します。

 

2015年4月14日

東京大学公共政策大学院/慶應義塾大学  教授

文部科学大臣補佐官

鈴木寛